体育館にはバッシュの音が鳴り響いていて。
カスミは首にぶら下げたブザーを鳴らし、シャトルランを取り仕切っていました。
「あと一本、おい、1年!膝つくな!」
ピーとなり響くブザーとカスミの鬼気迫る怒号。それに加えて、顧問の先生の鋭い眼光。夏休みの練習は佳境を迎えていて、明確に死が見えました。
カスミに対して、普段のやさしさからは想像できない、ドエスぶりに部員の中には
「鬼」
と叫ぶ声も多かったですが、しかし、そういった声が聞こえるとカスミは怒気孕んだ静かな声で
「鬼・・・私が?」
と、渇いた笑顔を見せて、何も言わせない雰囲気を作り出すのです。
しかし、その後に見せる
「夏休み、もう少しでしょ。私もサポートするから」
という、あの小さい顔から見せる笑顔には、どんな部員も骨抜きになってしまいます。アメとムチの使い方が上手いカスミでした。