『禁断の準備室 ―誰もいない校舎に響く、私と先生の水音―』

第1章:静かな予兆
放課後の理科準備室。西日が差し込み、埃が金色の粒のように舞う中、化学教師の高梨(たかなし)は、成績不振の生徒・結衣(ゆい)と向き合っていた。
高梨は、常に冷静で規律を重んじる「完璧な教師」として信頼厚い男。一方、結衣はどこか冷めた瞳で、大人を試すような態度を崩さない。
「先生、そんなに熱心に教えても、私、覚えられませんよ」
結衣の指先が、元素周期表をなぞる高梨の手の甲に、わざとらしく触れる。
高梨は眉ひとつ動かさず手を引くが、その指先は微かに震えていた。
「……覚えられないなら、覚えるまで帰さないだけだ」
冷徹な声とは裏腹に、高梨の視線は結衣の開いたシャツの襟元、白く細い首筋に釘付けになっていた。
第2章:一線を越える放課後
外では激しい夕立が降り始めた。遠くで部活動の声が消え、校舎が静まり返る。
「雨、ひどいですね。……ねえ、先生。先生も『化学反応』に興味、あるんでしょ?」
結衣が立ち上がり、高梨の背後に回る。幼いけれど確信に満ちたその腕が、高梨の肩に回された。
高梨の頭の中で、教師としての倫理観が音を立てて崩れていく。
「……結衣。君が何を言っているか、分かっているのか」
「分かってるよ。先生がずっと、私のことそういう目で見てたことも」
振り向いた高梨は、抗うのをやめた。結衣の顎を強引に引き寄せ、深い口づけを交わす。それは、清潔な教師の仮面を脱ぎ捨て、一人の飢えた男に戻る瞬間だった。
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