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凛と100人のお客様 #27妄想と現実のあいだで

その日も、あの秘密めいた一室で私は「凛」として過ごしていた。窓から差し込む光は薄く、昼間だというのに室内はどこか夜のように静かで、重たい空気が漂っている。香り高いアロマと微かな音楽だけが、この空間を満たしていた。私はいつも、ここに来ると現実とは違う世界に足を踏み入れたような感覚になる。凛という仮面を被る、特別な時間が始まるのだ。

控えめなピンポンという音に、いつも通り少しだけ体が跳ねた。モニターに映し出された男をじっと見つめる。──四十代半ば、スーツ姿なのにどこかだらしなさが見え隠れしている。その雰囲気から、今回の時間がどんなものになるのかを想像し、私は密かに興奮した。

ドアスコープで再度確認し、ゆっくりとドアを開ける。目が合った瞬間、彼の視線が絡みついてきた。微笑みも返さず、ただじっと、私を見つめている。一歩下がってからも、その視線は私の全身を舐めるように追っていた。

(え、なに? 入ってこないの?)

数秒間、動かない男に、私は柔らかな微笑みを向け、そっと促す。

「こんにちは。どうぞお入りください」

ようやく彼は一歩、そしてもう一歩、ゆっくりと靴を脱ぎながら中へと入ってきた。お茶を出しても、彼はじっとこちらを見つめている。誓約書を促し、交わす言葉はほんのわずか。

お茶を出しても、じっと視線をこちらに送る。
誓約書を促して、少ない会話を交わす。

(なにか、変わってる……この人)

「うつ伏せは、太ももと鼠径部中心でいいから」

お金を差し出しながら、彼はぽつりとそう言った。

(ロングなのに……鼠径部だけ? 今回は外れかも、変な人)

お茶を飲み終えると、彼は早々にシャワーへと向かう。さっさと服を脱ぎ、私が畳んでいく。シャワーの音がすぐに止んだ。きっと、体を流しただけなのだろう。


お茶を飲み終えると、早々にシャワーに行く。ささっとその場で服を脱ぎ、私がたたんでいく。

スッとシャワーに行ったかと思うと、シャワーの音はすぐに止まる。体を流しただけなのだろう。

(ちゃんと洗ってほしいのに)

 

そして、ベッドへご案内。私は温めたオイルを手に取り、彼の足元へと膝をついた。

「始めていきますね」

私の言葉に、彼は静かに頷く。太ももに手を滑らせると、彼の息が浅くなり、時折、漏れるような声が聞こえた。

「ああ……前の時、太もも、ホント気持ちよかったんだよ」

(前回、気持ちよかった所だけ集中して、やってもらいたいんだ、この人)

「鼠径部、もう触って。そこ気持ちいいんだよね。もっと奥まで」

彼は勝手に四つん這いになり、要求をぶつけてくる。

「お尻も触って。フェザーはいらない。しっかり触って」

「くすぐったかったですか?」

「あぁ、くすぐったい。しっかり触られたいの。包まれたいから」

「……ああ、そう。そこ」

彼は勝手に仰向けになり、さらに自分の欲求をぶつけてくる。

「密着して。乳首はいい、感じないから。腹の上、鼠径、玉、棒がいいの」

私は、彼の顔に息がかかるくらいの距離まで顔を近づけた。見つめながら、彼の膨らみをゆっくりと包み込み、上下に動かす。いつもなら自分からはこんな大胆なことはしない。けれど今日は先が長い。どうせなら、彼が求めているものを与え、この奇妙な空間に身を委ねてみるのも悪くない。

息がかかるほどの距離で、私は彼の目を見つめたまま、手で刺激を続ける。反応はいい。

「あぁ……すごい、すごいよ、奥さん。いいね。手つきがすごい」

彼はどんどん興奮していく。

「奥さん、もっとエロいこと言って。耳元で喘ぎ声聞かせて」

(完全に妄想の世界に入ってる。言葉が欲しい人なんだな)

「もう、いく? 出ちゃうの?」

私の声に、彼は全身を震わせる。

「出ちゃう。もっと言って。『出していいよ』ってささやいて」

「出していいよ。もう、こんなに大きくなっちゃって。ずっと見てたけど、ぴくぴく動いてる」

「えっ、マジで? 見てたの? もっと褒めて……あぁ、最高……!」

私は少し移動し、彼の耳元で、わざとらしく熱い吐息を混ぜる。その吐息に、彼の身体がぴくりと跳ねた。

「もう……出ちゃうよ」

「うん、出して。気持ちよく、なって」

彼の顔は、もう完全に別世界の中。私は冷静に、その妄想に寄り添う。鼠径部を滑らせるように、時にしっかりと、時に優しく。温めながら、刺激を続ける。

そして、絶頂を迎える。

「あぁ……えろいね。良かった。入れたら、すごい気持ちいいんだろうなぁ。次は本番しよ」

そう言いながら、彼はシャワーへと向かった。

(言葉攻めが好きって、すごい変態。言葉攻めだけであれだけ悶えられるなんて……)

本番はしていない。フェラも、すまたもしていない。もちろん体を触らせてもいない。けれど、彼の反応は悪くなかった。むしろ、心底満足そうだった。マンションの静寂が戻る中、私は次のお客様を待つ準備を始めた。

──凛の「観察」は、今日も続く。

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