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女体調律師(1)-指先の音色-

静かな雨音が窓を打ち続ける昼下がり、古城は招かれた屋敷の
一室で老女と向かい合っていた。

「久しぶりですね、先生」
七十二歳になる鶴見夫人は深くお辞儀をした。
彼女の背中にはかつての威厳が微かに残っている。

「三ヶ月ぶりですか。定期的な調整が必要ですね」
古城は穏やかな微笑みを浮かべた。
黒い作務衣を着た姿は簡素でありながら不思議な気品があった。

「今日もよろしくお願いします」
 老女の声に僅かな震えがあった。それは期待なのか恐怖なのか判断できない。

古城は無言で彼女の手を取り、優しく引っ張るように立ち上がらせた。
そして背後に回り込むと、その細い指をゆっくりと背筋に沿わせていく。

「っ……!」
瞬間、鶴見夫人の身体が小さく跳ねた。

「痛みますか?」

「いいえ……ただ少し驚いただけです」
古城の指先がまるで楽器を奏でるかのように背骨の周辺を探っていく。
その動きには一切の躊躇いがない。

「最近、胸元の違和感はありませんか」

「どうして分かるのですか?」老女が驚きの表情を浮かべる。
「娘以外には話していないのに」

「身体は嘘をつけません」古城は淡々と言った。

「特に長年連れ添った肉体ならなおさらです」
鶴見夫人の目尻に涙が光った。

「先生には敵いませんね」
鶴見夫人は苦笑いを浮かべた。窓の外では雨が強くなってきており、
庭の紫陽花が風に揺れている。

「五十年以上も人の体を見てきていますから」
古城は静かに答えた。58歳になっても衰えない集中力で夫人の体を調べていく。
指先が触れるたびに彼女の筋肉が微妙に反応するのを感じ取った。

「娘さんから話を聞いていらしたんですね」

「ええ」夫人は遠くを見る目をした。
「東京での新しい生活がなかなか馴染めないと。でも親としては何もできませんから」

「物理的にはそうです」古城は背骨の右側にある歪みに気づいた。
「ですが体を通して思いを伝えられることはあります」

指が一点を捉えると、夫人の全身が硬直した。
「痛いですか?」

「いいえ……懐かしい痛みです」彼女は目を閉じて深呼吸した。
「あの子が赤ちゃんだった頃によく抱っこしていました。
きっと負荷がかかっていたんでしょう」

古城の手技は優雅さを増した。指先が奏でるのは単なるマッサージではなく、
言葉にならない対話だった。

「お母さん」夫人が突然呟いた。
「若いころはよく怒られたものです。『もっと姿勢を正しなさい』って」

「親子の縁は不思議なものですね」古城は感慨深げに言った。
「世代を超えて同じ問題を持つことがよくあります」

施術が進むにつれ、部屋には二人の呼吸音だけが響いていた。
古城の指が肩甲骨の間に至ったとき、鶴見夫人は小さく呻いた。

「孫の結婚式でドレスを着たいんです」彼女は恥ずかしそうに笑った。
「この歳で贅沢でしょうか」

「大切なことです」古城は真摯に答えた。
「人を美しくするのは外見だけでなく、体の中から湧き上がる自信です」

二時間の施術が終わり、夫人は別人のように軽やかな足取りで立ち上がった。

「ありがとうございます」彼女は深々と頭を下げた。
「まるで生まれ変わったようです」

「また三ヶ月後にお伺いします」古城は黒い革鞄を手に取った。
「それまでウォーキングを続けられてください。特に朝食前の20分が効果的です」

雨上がりの庭に一筋の光が差し込んだ。
古城は傘を開き、次の依頼先へと向かう道すがら振り返った。
鶴見夫人は窓際で手を振っている。
彼女の背筋は凛と伸びており、そこに往年の大女優の面影があった。

指先だけで人を変えられるわけではない。
だが時に希望の種を蒔くことはできる
——それが58年の歳月を経て古城が学んだ真実だった。
クリエイターのプロフィール
自身の書いたブログ記事を生成AIに小説化してもらい掲載しています。
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