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黒い下着の女 第八話

驚きあわてるY男。女は、微動だにしない。その場に佇立している。ややあった。うろたえていたY男だったが、やがてなにかおかしいことに気がついた。クリーム色のスーツをまとったその女の表情だ。笑っているのだ。女は、かすかな微笑を、その顔にたたえていた。謎めいた微笑だった。この状況でなぜ笑っているのか?

 

女は、笑っている。なぜ、この状況下で笑っていられるのか?いかさま不気味なものを感じるY男。そして、ややあって、ついに、女が口を開いた。

「ここでなにをしているのかしら?」

しごくまっとうな問いだった。狼狽しているY男。しかし、女の異様な様子から、そのようなまともな言葉が発せられるとは、Y男の思いもよらなかった。

 

ところで、Y男の眼前に佇立している、この女は、やはり、あのビデオの主演女優の女にちがいないようだった。それくらい、眼前の女とビデオの女優とはうり二つだった。いや、もはや同一人物だろう。Y男は、自分の中で断定した。

Y男は、うろたえていた。目の前の女の異様な様子から、この女がこんなまともな台詞を述べるとは夢想だにしなかったからだ。二重の狼狽だった。

 

Y男の狼狽をよそに女が再び口を開く。

「ここでなにをしているのかしら?」

さきほどと同じ台詞を繰り返す女。Y男は、狼狽するあまり固まったままだ。

女が、三度、口を開く。

「ここでなにをしているのかしら?」

もしや、自分がなにか受け応えしなければ、この女は永遠に同じことを繰り返すのではないか?Y男は思った。

「ここでなにをしているのかを聞いているのよ。」

違った。

「あなた、誰かしらないけど、人の家に無断で上がり込んでいるのよ。普通に考えて不法侵入だわ。警察に連絡するわよ?!」

なにも答えない(答えられない)Y男に対し、たたみかける女。

 

「そ、それは...。」

やっとなにか言いかけるY男。

「警察に連絡するわ。」

ピシャリと言う女。言い訳を思いつかず黙ったままのY男。

「でも...。」

Y男が少年法を考え始めた時、女が言った。

「でも、わたしが提示する条件を満たせば警察に連絡するのは勘弁してあげてもいいわ。」

「!」

ろくすっぽ会話にもなっていなかったが、一方的に条件を提示されるY男。女が続ける。

「それはねえ...。」

息を呑むY男。

「それは、わたしを抱くことよ。」

「!」

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