セラピスト・アヤの堕落〜清楚な優等生の末路

※この物語はフィクションですが、現実に存在する声や出来事から着想を得ています。
「写真を撮るだけだから」
そう言われて案内された先は、六畳ほどの小さなルーム。
壁際に据えられた大きな鏡がこちらを映し返し、柔らかな間接照明が肌だけを淡く照らしている。
アロマの甘ったるい香りが空気を覆い、息苦しいほどの温度を密室に溜め込んでいた。
オーナーは口元に薄い笑みを浮かべ、指先で光沢のあるサテンのベビードールを弄びながら差し出す。
「とりあえずこれに着替えてきて」
指先に落ちる生地は、冷たくて、軽い。
______
脱衣所に入り、膝丈のスカートのファスナーを下ろすと、布がするりと落ち、白い腿が露わになった。
ブラウスの袖を肩から外すと、隠していた白いレースが鏡に淡く浮かぶ。
カップから溢れそうな膨らみを目にして、アヤは小さく息を吐いた。
(……やっぱり、この胸が……嫌い)
いつも視線を集め、からかわれ、誤解もされた。
見られるのは怖いのに、隠しきれない。
(でも……やらなきゃ……)
渡されたサテンを下着の上から被り鏡で確認する。
アヤは思わず腕で胸元を覆った。
(胸元……空きすぎじゃない?……)
はみ出たレースの谷間が、霰もなく主張している。
(なにこれ?……下着見えちゃってるじゃん……)
おまけに、細い肩紐からは、ストラップがはみ出している。
(……はぁ……やっぱり外さなきゃダメか……)
ためらいながら背中に手を回す。
ホックが外れる「カチリ」という音が、やけに大きく響いた。
支えを失った胸がふわりと揺れ、サテンの布を下から押し上げる。
肩からストラップを抜き取り、裾から引き出す。
鏡の前に立つ自分は、ベビードール一枚に素肌を隠しただけの姿。
コンプレックスの胸は、その形をくっきりと浮き立たせていた。
(…はぁ……よし……やるしかないか……)
______
シャッター音が、容赦なく続く。
「いいね、そのはにかんだ笑顔。お客さんはね、そういうの一番好きなんだよ」
言われるままに顔を傾け、顎を引き、腰を少し捻る。
——私は「完璧な姉」と呼ばれて育った。
清楚で真面目、誰からも褒められる“アヤ”でいなきゃならなかった。
けれど、サキのように自由に笑って、生きる姿を心のどこかで羨んでいた。
(でも私は、それを選べなかった……)
子供が好きなのも、自由に笑う姿が眩しかったからかもしれない。
だから、わたしは小学校の先生になった。
休み時間に一緒にドッジボールをしたり、鬼ごっこをしたり、一緒に花を育てたり……
ただ、一緒に笑えればよかった。

それなのに…
——夕暮れの教室、胸に落ちるいやらしい手。
シャッター音が容赦なく響く。
「いいね、アヤちゃん!カワイイよ。でもちょっと顔かたいかな…… 」
「すみません……」
(だって…こんな格好恥ずかしすぎるよ…)
アヤは両腕を交差させ、必死に胸を覆った。
「あ、アヤちゃん、手は後ろで組んじゃおうか?……そう。……で、体を少し横に捻って…そう!いいね!その方が体のライン綺麗に見えるから。」
突き出した胸にサテンが張りつき、膨らみがさらに浮き彫りになる。
(やだ……やっぱり恥ずかしい……)
慌てて背中を丸めると、またすかさず声が飛ぶ。
「背筋は伸ばして!だらしなく見えちゃうから。」
「……はい。」
カメラの後ろの鏡に映るのは、自分の姿をした知らない女性。
鎖骨を露出させた布はあまりに薄く、胸の形が透けて見えそうだった。
聖職を誇りに思った自分の輪郭が、男の性のために配置し直されていく。
「……はぁ……いい……最高だよ……」
最初は軽い調子だった声が、シャッターを切るたびに低く熱を帯びていく。
「その恥ずかしそうな顔……たまんねぇよ」
「谷間、もっとこっちに向けて……お!そう、そう……」
シャッター音と一緒に、荒い吐息が混じり始めていた。
レンズの奥から突き刺さる視線に、胸元を抉られていくような感覚が走る。
——あの時も同じ。
夕暮れの教室、胸だけを見つめる視線。
——
「採点は……ほら、こうやって……」
背後から落ちた低い声と一緒に、胸元へすべり込む下卑た指。
男たちは、結局みんな胸しか見ていなかった。
「え?本当ですか?……まあでも、アヤ先生の服装もねえ……そんな露出して来るから、勘違いさせちゃうんじゃないですか?」
そう、にやにや笑って言った校長も、胸ばかり見て私を守ってはくれなかった……。
——そして私は、あの学校を辞めた……
「とりあえず、撮影はこんな感じでいいかな。…じゃ、アヤちゃん、ついでにちょっと“講習”もしちゃおっか?」
「……え?……講習ですか?今日は撮影だけじゃ……」
「まぁ、いいじゃない。…ほら、また来てもらうのもあれだし」
「……はい…」
外の日はすっかり落ち、ルームは薄闇に沈んでいた。
アロマの香りだけが甘く漂い、それがかえって偽りめいて胸を締めつける。
二人きりの密室は息苦しいほど静かで、逃げ場のない影がじわじわと迫ってきた。
「じゃあ、アヤちゃんは鏡の方を見て胡座になって。」
背後に立つオーナーの体温が、じわりと背中に染み込んでくる。
肩を揉んでいたはずの手が、いつのまにか胸元へと吸い寄せられていった。
……!!
声を出す間もなくサテンの上を指が滑る。
「お客さんはねー、こうやって焦らしてあげると喜ぶんだよ。」
指先がゆっくりと胸をなぞり、形を確かめるように撫で回す。
「あの……こ、これって講習なんですか?」
「そうだよ。流れは最初に教えといた方がいいからね」
そう言いながら、指先が谷間へと滑り込んでいく。
指先がサテンの隙間を押し分け、さらに中へと忍び込む。
(やっ……だめ……!)
「だ、大体もうわかりました!」
思わず声を張り上げ、アヤは体を屈めてオーナーの手から逃れた。
「じゃ、次はうつ伏せいこうか?」
(……絶対また触られる)
「あ、あの……マッサージ経験はあるんで、大体わかります」
「え?未経験って聞いたけど?」
「こういうお店は初めてなだけで……普通のマッサージならやったことあって」
「……あ、そうなんだ…じゃあ最後だけやろうか。仰向け。ここが一番大事だから」
(よかった……)
「じゃあ今度は、アヤちゃんが実際にやってみよっか」
「……え?」
「ここに跨って。そう、腰かけてみて」
言われるまま太ももを開き、オーナーの下半身にまたがる。
横の鏡には、自分が男を挟む姿がくっきり映っていた。
(……やだ、こんな格好……)
「腰、前後に動かしてみて」
「こ、こうですか?……」
(これって……マッサージなの?……)
恐る恐る腰を揺らした瞬間、布越しに硬い異物が擦れた。
熱がじわりと伝わり、息が止まる。
(……やだ、当たってる……)
思わず体が強張り、腰の動きが鈍くなる。
「ほら、ちゃんと動かして」
「…….はい」
ギシ……ギシ……
「……おっ…おおっ…いいね……」
低い吐息混じりの声と、いやらしく濁った目。
アヤは視線を逸らしながらも、逃げられなかった。
「じゃあ、それ……今度は中から出して」
「は?」
「だから、オレのこれを……紙パンツから出してよ」
返事を待たずに手を乱暴に掴まれ、布の奥へ押し込まれる。指先に触れた硬さに、アヤは息を呑んだ。
(え?……ちょっと……やだ……)
強引に引き出させられた異物を握らされる。
「そう、いい……ゆっくり上下に動かしてみて」
言われるまま指を滑らせると、オイルが絡んでいやらしい音を立てた。
グチュ……グチュ……
音が部屋に広がるたび、異物はますます硬く膨れ上がっていく。
「こういうのは聞いてません!」
手を振りほどき、声を荒げる。
「いやいや、メンズエステってさ、みんなこうだよ?」
薄笑いを浮かべ、当然のように言い放つ。
「うちはバック率も高いし、出勤自由。ペナルティもなし。働きやすいでしょ?」
押し寄せる言葉に返せず、唇を噛む。
「……」
「たしか、稼ぎたいって言ってたよね?」
ねっとり絡みつく声が、逃げ場のない胸の奥を抉った。
——「は?うちにそんな金ないだろ。体外受精?いくらかかるんだよ」
「だってもう三年も…タイミングも人工も、全部やったの。次で最後にしたいの。」
「わかるけど…無理だって今は。これ以上は出せない。……そんなに言うなら、アヤが払ってくれよ」
(まだ20代だし、大丈夫だって思ってた。
でも検査の紙を見せながら、医者は淡々と言った。
「卵子の数や質は、年齢よりも少し早いペースで減っていますね」
——その一言で、胸の奥にタイマーを押し込まれた気がした)
「……わかった。わたしが出す。……どうにかして」
「……これでいいですか?」
再び固い異物を握り、恐る恐る上下に動かす。
「そう、そう…うっ……いい…」
歪んだ顔から余裕が消えた、その瞬間。
——!
不意に伸びた両手が、アヤの胸を荒々しく包みこむ。
「あっ……!」
乱暴な手つきが、布越しに形を押し潰す。
サテンの裾を捲り上げられると、素肌が露わになり、
重さを持った胸が大きく揺れた。
「おぉ……やっぱり……でかいな…」
取り憑かれたように繰り返し揉みしだく手。
荒れた指が、柔らかな形をぐにゃりと歪ませる。
「やっ…だめ……やめて……」
必死の声も、濁った呼吸にかき消されていく。
「はぁ、はぁ…」
オーナーはもう聞いていなかった。
荒い息を吐きながら、先端を口に含む。
「あっ……!」
粘ついた舌が何度もなぞり、濡れた音だけが静かな部屋に響いた。
「やっ……はっ……」
抵抗の声は弱く、背筋に冷たい恐怖だけが広がる。
やがて、熱を帯びた異物が谷間に押し付けられた。
押し潰されて擦られるたびに、鏡の中の自分が歪んだ。
(……やめて……いや……もう……)
声にならない祈りは、誰にも届かない。
獣のような荒い呼吸。
執拗に擦り付ける動き。
もはや人ではなく、目の前にいるのは欲に支配された怪物だった。
「はぁ…はぁ……」
荒い吐息に合わせて腰が打ちつけられるたび、湿った先端が谷間から顔を覗かせる。
(……もういい、終わって……早く……)
祈るように目を閉じた。
「うっ……!!」
短い叫びとともに、胸にぶちまけられた白濁した熱い体液がドロリと流れ、涙と混ざり合いながら肌を這い落ちていった。
我に返ったオーナーは、息を整えながら「破格の待遇でうちに入ってくれ」としつこく食い下がった。
だがアヤは、首を横に振るしかなかった。
逃げるように玄関へ向かうと、最後に分厚い封筒を押しつけられる。
「誰にも言うなよ」
——そういう意味なのは分かっていた。
もともと話すつもりなどなかった。
こんなことは……誰にも知られたくなかった。
——サキにだけは、絶対に。
エレベーターで一階まで降りる。
夜の空気は湿っていて、街路樹の葉が雨の匂いを運んでくる。
「もう帰るよー」
母親の声に、ブランコから飛び降りた少年が手を握る。
その何気ない仕草に、胸が強くきしんだ。
——ブルッ
「産まれました♡」
画面に映る、赤ん坊と友人の笑顔。
彼女は母になり、私は男に汚された胸を押さえ、冷たい街に立っていた。
封筒を開き、無言で中身を数える。
指先に伝わるのは温もりではなく、ただの紙の冷たさだった。
札だけを財布にしまい、残りはゴミ箱へ落とす。
夜の街に響いた足音は、もう戻れない道を告げていた。
——その先に、堕ちゆく“アヤ”の物語が始まるとも知らずに。

